リアエアコンの吹き出しがぬるいとのことで、98年式のアストロの入庫。
車両上部、手前側の丸い形の噴出し口から出る風がぬるいことを確認。
フロント側エアコンは効いている。
よって、エアコンガスの漏れではなく、エアコン電気回路の制御系統の故障にて先に進む。
エアコンゲージを接続してガス圧を確認。
ゲージの針は、低圧側約2kg(青色)、高圧側9kg(赤色)をさしている。
外気温度約25度程。 ※1
低圧側がやや高く、高圧側がやや低いよう。
高圧側が低い原因として、ガス不足、コンプレッサの圧縮不足、エキスパンションバルブのつずり調整の不良等、多岐にわたるが、問題点の切り分けとしては、ガス不足の場合は全体的(低圧側)に数値が低く表示される(ガスの現存量に対して相対的にかわる)が、今回のケースでは低圧側がやや高めながら、フロント側エアコンが冷えていることから、ガスはほぼ規定値と判断。
実際のところ、いったん冷媒回路内に入り込んだガスの適正量を調べるのほ、ほぼ不可能であり、
間接的に測定条件を考慮してのゲージ圧から読み取り、サイトグラスからの冷媒の状態の確認、
低圧パイプの感覚的測定(手で触って、五感で感じ取る)等で判断する。
アストロ等輸入車の場合、サイトグラスもないので、ほぼゲージ圧と感覚にて判断することが多い。
フロント側は良好に冷えているので、現状、リア側にガス規定量以外原因がある模様。
国産車のレシーバー(液化装置兼不純物除去フイルター)にかわるリキッドタンクに低圧側接続。
画面中央はフロント側エアコンユニット(エバポレータ)。
リア側噴出し口を取り外した様子。
アルミの縦線になったものがヒーターユニット。
この車両の場合、温風と冷風をエアミックスするため、冷やされた空気が再度暖められてから室内に噴出す仕組みになっている。
まずここで本来、温水が止まっているべはずが、そのまま流れていた。
当然、冷やされた空気が外気温度25くらいにもかかわらず、暖められていたことになる。
再びエンジンルームに戻り、バキューム系統を点検する。
この車両の場合、空調の吹き出しや温水バルブの開け閉めは負圧にて機械的に制御している。
画面中央の黒く丸いものがリア側バキュームダイアフラム。
バキュームホース取り外しにて点検」、ここに負圧はきていない。
念のため、ダイアフラムを手動で動かすと、リア側温水バルブが閉じられていたため、
ここからバキューム回路のつまりと判断する。
ここから修理の工程にはいるのだが、施工方法はいくつかある。
本来の作業では、バキューム回路内のつまりを除去することになるのだが、
温度調整レバーの交換の他、バキューム回路の点検となる。
温度調整レバーで決まればいいが、もしその先(つまりバキューム回路内つまりがあること)に原因があるなら、ちょっと厄介で、メーターパネル、オーディオの他、ダッシュパネルも半分取り外さなければならない場合もあり、時間も工賃もかかってしまう。
ユーザーと相談の上、フロントバキュームダイアフラム側からバキューム回路を増設してリア側ダイアフラムにバイパスする施工で対応する。(画面中央の丸いケースがフロントダイアフラム。ここから分岐アダプターを増設、バキューム回路を新設する)
無事、フロント側と連動することを確認。バキューム回路側は修理完了となったが、
やはりいまいち冷えが悪い。
やはり複合的不具合のようで、リア側のエキスパンションバルブのつずり調整が不良の様子。
実際、エアコンゲージの高圧側が低かったのは、ここで圧力がかかりづらく、
冷媒が十分に気化しないと思われる。
部品確認のところ、すでに生産中止にて部品入手が不可能になっていた。
時間をもらい部品の調達を試みるも、ユーザーより多少冷えが悪くても、最初よりよくなっているので、
これでよいとのことで作業完了となる。
後日部品確認してみると、本州のほうでのアメ車の専門店での扱いがあることがわかり、
ユーザーに提案、改めて作業するとのことで今回は終わり。
※ 現在の圧力表記の単位は MPA(メガパスカル)という単位で
以前の表記の KGの約1/10。
KGで慣れていたため、いまでもそのままのKG表記を使っている。
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