96年式 ランドローバーディフェンダーにFFヒーターの取付にて入庫です。
電装屋さんにおいて、冬の季語はエンジンスターターとヒーターですが、
その例にもれず、今回ご案内するのは、FFヒーターの取付です。
取付するFFヒーターは、当店ではおなじみのベバストヒーターで、
当店にて用意したものを取付にて、承ったものとなりました。
あわせて、集中ドアロックとキーレスの取付も承ったものです。
この自動車は、純正のヒーター(温水式)がとても寒く、
エンジンが暖まっても、吹き出す風が寒く(ぬるい)、
いつまでたっても暖かくならず、なんらかの後付ヒーターの必要性を感じられていたところ、
FFヒーターを検討されていたようです。
実際、純正ヒーターは確かに寒く、この自動車はみんな、ヒーターが暖かくならないそうです。
今回、取付するベバストヒーターは、air top 2000 alt 12v ディーゼル(軽油)です。
今回は、サブバッテリーがない状態での取付となりましたが、
標準のヒーターが寒いため、自動車を運行しているときに、
ヒーターを使うため、つまり、エンジンがかかっていて、
メインバッテリーに常時充電されている状態での使用のため、
問題なしと判断、取付したものです。
お客様オーダーより、運転席と助手席、後部座席の各足元に吹き出し口を、
計3個設置するものとなりました。
実際、この自動車での設置は、構造上、ダクトを通すために、
数箇所に穴あけ加工する必要がありますが、それを行なってでも、
そのように取付しなければ、せっかく取付したヒーターの温風が届かないため、
取付にあわせて、ダクトの取りまわし加工をメインとした取付作業となりました。
また、その取付加工において、様々な工夫も必要と思われ、
現車確認をじっくり行い、必要部材を吟味して、作業に臨みました。
その工夫の箇所は、作業風景の中から、ご案内してさせてただきます。
ヒーターのコントロールスイッチは、液晶表示の
マルチコントロールスイッチを使用します。
今回の作業は、加工がメインの作業となり、通常の用品の取付のように、
時間が読めないこともあり、また、やってみないとわからない、細かいところがあったため、
お客様には、時間を多めに頂きました。
それでは、さっそく取付の開始です。
まずは、集中ドアロックの取付から始めることにします。
今回は何をやっても時間がかかる事が予想されるため、
いつも以上に繊細にかつ、大胆に思い切って作業を進めます。
運転席側ドア内部の様子。
ドアロックアクチュエーターモーターの設置場所は、
ドアロックのノブの下方、斜めに下がっているロッド部分でしかありません。
この斜め下に下がっているロッド部分に、
アクチュエーターモーターのロッドを割り込ませるように、設置していきます。
アクチュエーターモーターの設置部分を確保するために、ドア内側表面部分を
切り落としていきます。 およその部分を記していきます。
裏側には、ウインドウガラスが上下に可動するため、
その隙間にあわせて、モーターを設置します。
そのモーターの取付方法は、最初にドアロッドからモーターへロッドの位置を決め、
モーター取付ステーも仮付けして、最終位置を決めます。
この作業が一番シビアで、時間がかかってしまいます。
モーターの仮の位置が決まったら、それにあわせてモーター側の
ロッドの長さや角度を決めて必要な加工を行ないます。
仮付けのまま、ロッドを組み込んで、
ドアロック側のロッドの作動範囲にあわせて、固定します。
モーターステーの取付のために、ナッターを埋め込みます。
これは、ビスではなく、ボルトナットを使うためですが、
そのほうが、安定性がいいものであるために、ひと工夫して取付しています。
もちろん、車両によっては、ビスでの使用しかできない場合もありますが、
可能な限り、そのような方法で作業を進めていきます。
当然、車両の形状に合わせて、汎用品を設置するわけですから、
その設置面がすべて平らなわけではありません。
そのため、設置面や箇所にあわせた工夫が必要です。
ここでは、ドア内面の奥まった部分にスペーサーが入ったグロメットを入れて、
取付ボルトを入れて固定しています。
この作業をドア4枚分行うため、どんどん先にすすんでいきます。
およそドアの作業のメドがたったので、
次は、燃料タンクを取り外し、燃料取り出し管を取付します。
この燃料の取り出し方法には、使用部品と合わせて、いくつかあるのですが、
今回は直接、タンクからの取り出し方法を取りことにしました。
予め調べてみたところ、この自動車でのヒーター取付の際は、
燃料戻し(リターン)ホース側に三方ジョイントを割り込ませて、
そこから燃料を取り出す方法もありますが、
その資料先によっては、燃料が安定しないため、タイミングによっては
ヒーターが正常に作動しなかったり、エンジンへの悪影響も考えられるともいっています。
また、別な資料から見ると、問題なくとれるような記載もあり、
判断にまようところではあり、実際にやってみなければわからない部分ではありますが、
やってみてダメな場合、余計に手間がかかり、
またその不具合がわかるのに、時間がかかることが予想されますので、
そのような場合、当店では、たとえ、手間がかかる作業工程であっても、
お客様には、その必要性を説明し、確実な作業方法をとるようにしています。
画像では、燃料タンクの脱着の際、
給油パイプを取り外すのに、ボルトが固着していたので、
バイスプライヤーでボルトの頭を挟み、取り外していきます。
これが、なかなか大変で、
やっぱり、三方ジョイントを使ったほうがよかったべかなどと、
心の隙間に、邪念が降って湧く瞬間でもあります。
とりはずした燃料タンク。
取り外しの際、給油用燃料ホースとリターンホースを取りはずさなければ、
タンクが下りてこないため、ホース類を取り外してからの作業になりましたが、
ホース自体が固着しているため、取り外しはできても、再使用ができないため、
お客さまへ状況の説明、追加部品の必要性を伝え、作業の続行です。
燃料取り出し管を取付する準備をします。
ここでは、燃料タンクの高さに合わせて、管の長さをあわせていきます。
燃料タンクに穴あけ加工の様子。
穴あけ部分の表面に、モリブデングリースを塗りつけます。
これは、切り粉がタンクの中に入らないようにするためのものです。
その上で、ゆっくりとホルソーをまわして少しづつ穴あけを行ないます。
これは、かなりの効果があり、切り粉がタンクの中に入ることはありません。
穴あけ後の様子。
燃料取り出し管を設置します。
予め、燃料ホースを取付しておいて、後は車両へタンクを戻していきますが、
ホース部品を手配中のため、タンクの作業はここまでとします。
車両側のシート等、取りはずせるものは、すべて取り外しておきます。
同時進行で、細かい作業も行います。
ここでは、燃料ポンプへ接続ホースをつないでいます。
FFヒーターをディフェンダーに取付する場合、
運転席下か助手席下の空き空間があり、そこに取付するケースが多いと思いますが、
その際に注意するべきことは、シートを取付したあとは、
完全な密閉空間となるため、ヒーターの出る熱がこもってしまいます。
助手席下では、バッテリーが設置されているので、ここではヒーターの設置はできません。
(設置スペースは作れますが、かなり熱くなるので、バッテリーへの悪影響を避けるため)
したがって、運転席側での設置になりますが、
暖めた空気(室内空気)を取り込む事ができないため、
吸い込みダクトを設置しなければなりません。
まずは、ヒーター本体あてがい、設置場所を確認します。
吹き出し口と吸い込み口の設置面を決めていきます。
設置面が決まりましたら、穴あけ加工を実施。
手早く作業を進めていきます。
同時進行で、助手席側も位置を決めていきます。
吹き出しダクトを設置する場所に、ECUが取り付けられています。
これを、移設し、吹き出し口を確保していきます。
穴あけ加工の様子。
どんどん作業を進めていきます。
時間がいくつあっても足りません。
助手席側足元のダクトを仮付けしている様子。
さらに、配線を通すための穴も開けていきます。
先に移設しておいた、ECUの横に吹き出し口があります。
今度は、後部座席側のセンターに1箇所、吹き出し口を穴あけしていきます。
うまく穴あけができましたね、
この調子で、どんどん先にすすめていきましょう。
さらに、助手席側に温風ダクトを通す穴を開けていきます。
径は70mm。
運転席側にも温風ダクト用に穴を開けていきます。
その下には、配線を通すための小さな穴も開けておきます。
主要な部分での穴あけ加工にもメドがついたので、
いよいよヒーター本体の穴あけを行ないます。
まずは、取付ステーをベースに型紙を作ります。
型紙はこのようになります。
これをベースに車両側へあてがい、作業を進めていきます。
作成した型紙を設置面へあてがいます。
穴あけ作業後の様子。
次に、吸い込みダクト用を作成します。
例によって、型紙を作成してから、ダクトを作成します。
出来上がったダクトの様子。
同じ寸法の型紙を設置面にあてがい、穴をあけていきます。
吸い込みダクトの設置の様子。
これで、室内の空気を取り込むことができます。
作業はまだまだ続きます。
次に、ヒーター本体を設置します。
先に、吸気管、排気管、燃料パイプ等の補機類を取付します。
ヒーター本体を設置、固定後は、下回りにて、各部品を決めていきます。
同時作業にて、ヒーター穴あけ面に、耐熱性コーキングを添付します。
燃料ポンプの設置の様子。
こちらは、吸気管の設置。
フレーム上部とボディの隙間に固定します。
先に手配していた、燃料ホースが届きました。
これをつけて、燃料タンクも取付してしまいます。
さらに、同時進行にて、配線を引いていきます。
こちらは、集中ドアロックの配線を延長してひいています。
このとき、ヒーターのメインハーネスも一緒に作業しています。
ドアロック用配線を、それぞれのドアまでひいていきます。
配線をとりまわしながら、集中ドアロックユニットを取付します。
ヒーターメインハーネスとドアロックの配線を、コルゲートチューブに収めて、
ミッション上部へとりまわしていきます。
どんどん同時進行で作業を進めていきます。
延長した配線にハンダにて結線していきます。
ドアロック配線の延長の様子。
助手席側での配線作業の様子。
ここで、ドアロックの配線がつながりましたので、
作動試験を開始します。
集中ドアロックは、運転席側のノブを動かすと、他の全部のドアが連動します。
キーレスでのリモコンでも、無事作動が確認できました。
次は、温風ダクトを通していきます。
穴を開けた部分に、溝ゴムをグロメット代わりに設置していきます。
ここで、保温チューブを使用します。
ディフェンダーでは、運転席側下と助手席側下との間は外空間になっていて、
ちょうどミッションの上を渡るようになります。
そのため、温風ダクトは一旦、外側へ出るため、
その際の温度低下を防ぐためと、
下回りからの水や汚れを防ぐためには、必須の部材となります。
保温チューブをつけて、温風ダクトを設置していきます。
ここでは、後方部へのために、三方ジョイントを中間に入れて、
風を分岐しています。
ジョイント部分には、同じ材質のテープを巻きつけて、隙間をうめて生きます。
助手席下側での温風ダクトの設置の様子。
あわせて、ハーネス等もひいていきます。
いよいよ、作業も大詰めになってきました。
ここで、ヒーターの作動点検を実施します。
さぁ、無事点火してくれるのでしょうか。
コントローラーのスイッチをオンに…
まもなくして、ヒーター本体のモーターが作動し始めます。
そして、その後に燃料ポンプから、燃料を汲み取るための、カチカチ音が聞こえ始めてきます。
まもなくして、エラー表示がされ、ヒーターが作動を止めてしまいます。
これは、燃料内のエアが抜け気っていないためであり、
再度、スイッチをオンにして、引き続き燃料配管内のエアを抜き取っていきます。
2度めのスタートで、ヒーター本体からの着火したあとの音が聞こえてきました。
同時に 排気管からも、ゴーッと音がしてきました。
排気管からは白煙が出てきます。
無事、着火しました。
この一連の作業は、なれたものではありますが、
毎回、どきどきしながらの作業でもあります。
助手席側下へバッテリーを戻し、キーレス本体を設置していきます。
いよいよ作業は最終を迎えます。
ヒーターの作動試験は、1日~1日半ほど実施します。
そのため、バッテリーを補充電しながら、試験を続けます。
補充電に使う充電器は、c-tek を使います。
作動試験を実施しながら、そのあいまに、
各ドアパネルも戻していきます。
あともう少し、がんばれ!
運転席側足元吹き出しグリルと吸い込み口の様子。
後部座席側、センター部の吹き出しダクトの様子。
助手席側の吹き出し口の様子。
それぞれの吹き出し口から暖かい風が出てきています。
これなら、もう寒くありませんね。
これで快適な冬を送れますように。
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