06年レンジローバーディフェンダーのエアヒーターの点検にて入庫です。
不具合内容としましては、着火時に白煙がモコモコ出てきて、着火せず、
同時にエラーコード表示するということです。
入庫時点検では、すでにロックアウトがかかってしまい、
ヒーターを作動させることができない状態になっていました。
さて、ディフェンダー、黒いディフェンダーですが、
去年もディフェンダーに、エアヒーターの取付をしましたが、
年明け早々に、またディフェンダーの入庫です。
そのときは白いディフェンダーでしたが。
当店のジンクスにおいて、
なぜか、同じ作業内容や関連するのものであったり、
同じ自動車が続けて入庫する傾向にあり、
今回も、そのジンクスの例に漏れず、キーワードはディフェンダーでベバストなわけです。
そんな話はどうでもいいとしまして、
それでは、さっそく点検の開始です。
まずは、続けて同じコードが入力されることによる、コードロックアウトの状態を解除し、
再度、ヒーターを作動させてみることから始めていきます。
コントロールスイッチはいわゆる、ベバコンが装着されていました。
ところで、このベバコン、この製品はベバスト社で製造販売しているものではないということで、
ベバスト社の認定による、正規社外部品というものなのだそうです。
さて、この自動車のベバストヒーターは、実は、当店での取付したものではなく、
別なところでの、扱いのようですが、当店へご依頼頂いたものになりました。
ヒーター本体は後部座席の下側に設置されています。
ヒーター起動時に、まもなく大量の白煙が出てきて、
やはり着火することなく、エラー表示がされます。
コードNOは、01でスタートの失敗によるものでした。
この時点で、ヒーター内部の問題があると思われるので、
ヒーターを取り外してのオーバーホールを実施することに。
ヒーター内部の様子。
まだ、外観はきれいなもので、
3年たっていないものだということでしたが、
さて、燃焼部分はどのようになっているのでしょうか。
作業を進めていきます。
モーターを取り外し、燃焼バーナーの上面を見てみます。
なにやら、油っぽい状態になっていますが…
取り外した、燃焼バーナーと燃焼管の様子。
やはり、表面がかなり油っぽい状態になっています。
画像を見てみると、妙に光沢があることで、
その状態が確認できるかとおもいます。
燃焼室内部の様子。
それほど、すすけた様子はなく、
やはり、全体的に油っぽい状態になっていることが確認できました。
さて、燃焼管を取り外し、燃焼バーナーの内部をみてみますと、
原因がはっきりしました。
すすの塊が、空気取り入れ口を完全にふさいでしまって、
外からの空気を取り込むことができなくなってしまい、
油(軽油)だけが吹き出し続け、
結果、着火できない状態になっていたようですが、
それにしてもひどい状態です。
バーナーに、完全にすすの塊が固着してしまっています。
まだ、取付してから3年たっていないということですが、
なぜ、このような状態になってしまったのでしょうか。
バーナーをよく見てみますと、白い燃えカスが確認できます。
これは、なんらかの添加剤を使っていることをあらわし、
通常の軽油に加えて、別な科化学性物質が混入すると、このようになるようです。
お客様に確認してみたところ、
やはり、燃料添加剤の他に、以前、軽油が凍結したために、短いスパンで、
凍結防止剤も入れていたということでした。
グロープラグの様子。
プラグの先端も、ススが固着し、固まっていました。
最初、プラグが抜けてこなくなっていたのは、
バーナーと一緒に固着していたためのようでしたが、
これでは、再使用ができないため、プラグも交換することにします。
吸気サイレンサーと、排気サイレンサー(マフラー)は清掃して再使用、
吸気管と排気管の一部分は、腐食による、穴あきが見られたので、
新しいものに交換することにします。
さらに、燃料フィルター(下にある白い小さなもの)も交換します。
分解清掃作業を終え、車両に取付た後に、作動試験を実施します。
ヒーターを起動すると、おもむろにファンがゆっくりと回り始め、
燃料ポンプからカチカチ音が聞こえてきます。
新規取付のときと違って、燃料はある程度燃料ラインにまわっているので、
スタートは1回で着火することができましたが…
まもなくして着火したようです。
最初は白煙が出てくるものですが、
いつまでたっても白煙が出続けてきます。
それも、どんどん吐き出す量も増えてきて、
それはもう、ぜんぜん直っていないんじゃないかというくらいに、
勢いよく白煙が出てきます。
おそらく、排気サイレンサーの内部にまだ汚れが残っているようです。
マフラーは非分解式のため、完全に汚れを取り除く事ができないため、
このまま、燃焼して、汚れを焼ききってしまうことすること、やや半日以上…
ようやく白煙が収まってきたことを確認し、
何度かヒーターをオンオフし、燃焼試験を続けていきます。
燃焼試験と同時進行にて、
別にオーダーを頂いていた作業を進めることにします。
以前、ライトスイッチの接点が不良になってしまい、
新しいものに交換したとのことですが、
今後の再発防止のために、ライトリレーハーネスを取付することに。
その取付するハーネスの取り扱い説明書。
現物を取り忘れてしまったためです。
作業内容はいたってシンプルなものではあるのですが、
助手席側(L側)のライト裏のカプラーが取り外せないのなんのって、
ライト裏側まで、手をいれることができないようになっているのです。
エアコンレシーバータンクとオイルタンクがあり、手を入れる隙間がなく、
上からできないのであれば、下側からかと、タイヤハウス内から眺めてみるも、
アンダーカバーが、どうにも取り外せない構造のようになっているのです。
、おそらく、本気になってアンダーカバーを取り外そうとおもったら、
フェンダーごと外れてきそうな構造のため、
観念して、エンジンルーム内から、作業を進めることにしますが…
うーむ! 困った!
どうやってカプラーまで手を入れるのか?
エアコンレシーバーやオイルタンクなど、簡単に取り外せるものではありませんので、
このようなときは、真正面から正攻法で取り組みます。
固定ブラケット等を取り外しながら、多少の隙間を作ってやり、そこから、無理っくり、手を入れて、
イテテテ… と叫びながら、ライトカプラを取り外すのです。
しかも、非常にせまいスペースなので、
この寒空の中、果敢に腕をめくって、望まねばなりません。
やりかたとしましては、1回目にイテテテ…と叫びながら、カプラをはずします。
そして、2回目にイテテテテテッ…!と叫びながら、交換するハーネスのカプラを、
ライト裏側へ差し込んでいくわけです。
なにしろ、片手しかはいらないものだから、
しばらく、のたうちまわりながら、歯をくいしばっての交換作業になります。
その甲斐あって、カプラも差こめて、リレーも固定することができました。
さて、このハーネスはディフェンダーの純正パーツということでしたが、
どこが純正なのか、電源線がぜんぜん短いではないですか。
(青い配線が電源線)
この自動車のバッテリーは室内(助手席下)に設置されているのに、
あたかも、エンジンルーム内にバッテリーがあるかのような長さなのです。
自動車用品の取付は辛く、長い道のりが続きます。
同じ太さの配線を用意し、延長していきます。
車両下側に配線をはわせていき、バッテリーへ引き込み、結線していきます。
それなりの時間がかかりましたが、
ヒーターの燃焼試験をかねていたので、ちょうどいい時間でありました。
ハーネスを引き終えたころには、
すっかり、白煙は消えていたので、まぁいいかということで、作業の完了です。
ところで、ベバストヒーターの話に戻りますが、
メーカーによると、添加剤等の使用は推奨していないようです。
添加剤にも、いろいろな種類や製品がありますが、軽油燃料等の凍結に伴う始動性の不具合が感じられる以外は、添加剤は使用しないほうがいいのかとおもいます。
いろいろなヒーターの分解修理をしていた経験から、
今回のようなケースは、わりと珍しいほうなのかなという気はしますが、
やはり、燃料まわりに関しては、いろいろと気を使っていたほうがよさそうでず。
なお、軽油にもいくつかの種類があり、北海道のような寒冷地になると、
特3号軽油という、寒冷地用のものが使われています。
いわゆる、燃料化学メーカーでの、添加剤入り軽油燃料といったところで、
流動点(凝固する直前のこと、シャーベット状になる境目のこと)は-30℃、
その範囲内であるなら、軽油は凍結しないということになります。
もし、そ範囲内での凍結が起こりえるのなら、車両側の燃料フイルター内の水分の混入や、
他の種類の軽油である可能性のほうが高いので、そういったところも、
点検したほうが、いいのかもしれませんね。
注意点としましては、先に申し上げた、北海道地域でのヒーター使用のユーザー様は、
特3号軽油を仕様している事が多いはずなので、
夏場の、シーズンオフ時には、1ヶ月に1度はヒーターを作動させて、燃料ラインの軽油を
固めないようにし、シーズンイン前には、ヒーターのフィルターを毎年交換するようにしておけば、
ヒーターも長持ちさせることができるはずですので、ちょっとした手間をかけるよう、
メンテナンスをしていただきたいかとおもいます。
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